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宮崎晃吉さんの
MOCTION

木材はCO2のストックである。原木市場や製材所でうず高く積まれてる木材をそのまま都市にぶち込んでみたい。MOCTION設計デザイン(施設・家具) 宮崎晃吉

原木市場や製材所の現状から
課題が見えてきた

施設やプロダクトの設計をする前に、まず実際に青梅や多摩の現場に伺って、製材所や原木市場の競りなどを見せてもらいました。そこで僕が驚いたのは、東京の森の原木や木材のリアルな姿でした。

原木も木材も、かなりの量がうず高く積んであって、迫力に圧倒されたのが一つ。他にもトレーサビリティーの部分で、すでに取り組みがされていて、透明性があると分かった。どこの山で伐って、誰が製材してとか、材木屋さんや施工者ぐらいの所までは、何処から届いているか分かるわけです。

木材は産地がわかる。そこが非常にユニークなところで、鉄とかコンクリートは、色々混ざってよくわからない抽象化された素材なんです。だから産地がはっきりしている事は木材にとって必ず強みになると思うんですが、同時に感じたのは、エンドユーザーがそれを知らないなっていう印象が僕らの感覚ではあったんですね。

「この産地の木材を使うって事は、どういう事なんだろう?」というところが、ユーザーの気持ちとしても、単純に僕ら建築家としても、よく実感できてないなと。でもその部分は、何か単純に見せ方の問題じゃないか、という事が、今回の課題の一つとして感じられたわけです。

他に気になっていたのは、消費のカタチが、ここ数年すごく変化してきてるということ。「買ったモノの先には、何が繋がっているのか?」そこを意識してる人が確実に増えた。それは個人単位でも、企業単位でもそうですが、自分たちのビジネスが、どう社会に貢献しているか意識してるんですね。

だから「東京の人たちが、東京の森の木を使っていく」ということに、価値や意義があるし、その意義が伴う消費に、きちんと応えるプロダクトであるべきだと、思ったわけです。

消費者と生産者を
プロダクトで繋げるために

今回はオフィスの木質化がテーマで特にインテリアとして木材を使うのですが、当然木材の良いところ、心地よさ、柔らかい手触り、温かみといったことはあります。でも、それ以上の意味が、あまり提示できてないと思ったんです。

だから、わかりやすい指標として「木材はCO2のストックである」という事に焦点を当てています。木が空気中の二酸化炭素から炭素を固着化してるという事実は、誰もが知っていながら、木材では意外とその側面で強調されてこなかった。炭素が固着された状態を、どう維持しストックするかが、また大事なんですけどね。

今の都市と森林の関係って、何かこう、ひっくり返った関係性というか。森林のために都市で森の木をストックするっていうのが、むしろリアルな役割なのでは、という思いがすごく浮かびました。

だから、原木市場で原木がうず高く積まれてる光景とか、製材所に整然と並んで積まれてる木材の姿っていうものを、そのまま都市にぶち込んでみたいんですね。それを実現させたいなっていう風に思ったのが、今回のプロダクトに関するちょっとした初期衝動ですね。その視点から、国産木材を使ったオフィスのプロダクトを考える際に、重要だと思う3つの言葉を用意したわけです。

1つ目は、カーボンストレージ。炭素をストックしておく貯蔵庫・収納庫であることが大事。2つ目が、リユーザビリティ。燃やさないで木として存在し続け、いかに永く使われ続けるかが非常に大事。3つ目は、アウェアネスっていう言葉を使ってますが、森林への無関心に対して、気づかせるのが大事だと思っているんです。

  • 宮崎晃吉/MITSUYOSHI MIYAZAKI
  • ●1982年 群馬県前橋市生まれ
  • ●2006年 東京藝術大学大学院修士課程修了
  • ●2008年( 株)磯崎新アトリエ勤務
  • ●2013年 設計事務所 HAGI STUDIO開設

ここから先はWEBだけで読めるお話都市について感じてきた事が
ここにも繋がっている

© Photography by Yikin Hyo

このMOCTIONのプロジェクトをきっかけに、都市と木材の関係を改めて考えましたが、それ以前に、僕らも様々な取り組みをする中で、都市が都市だけで自立していく社会っていうのが、あまりリアリティがない、持続性がないっていうのは、色々と意識してきていました。

都市っていうのは自立して完全なものである、という抽象的な思い込みに対して、しっぺ返しを食らってるっていう状況は、今の東京の問題でもあるけれども、世界中の問題でもあると。これが結構、現代の源にあるのかなぁってのは、現状に対するビジョンとして割と持っていた。

それは、ある一手で全部が解決できるわけではないんだけど、どういう風に現代において調停していくか、自分たちができる範囲で何があるのかなっていうのを、元々、前提として考えていたところです。

今回の話をいただいたのがコロナ禍の状況下なので、やっぱり地球環境に対してはアクションしないとホントにまずいぞ、もう遅いけどやらないと、っていうのは考えるというか。

短期的な対処っていうのも必要なんですけど、長期的な対処で考えると、やっぱり地球関係のしっぺ返しを食らっているっていう状況に対して何かしたいという思いがリアルにあったので、僕の心境としてはそういうところが、すごく強いモチベーションにはなりました。

木材を転用して造り変える
その可能性を残したい

木材を転用して造り変える
その可能性を残したい

都市のオフィスっていうのは非常に回転が速いし、せっかくオフィス作っても何年かで動かなきゃいけないことが往々にある。だから、その回転の速さと、(木材を使った状態を)維持しなきゃいけないってことは矛盾があるわけですけど、木材が、転用できるってことで1つ担保できるのではないかと思ったんですね。

そういう意味で流通材・角材っていう1つのモジュールが世の中にあるので、それに則っておくことで、転用の可能性ってのを担保しておきたいわけです。

そういう意味で、展示されてる家具にはあんまり加工していない。ビスとか穴を開けまくってしまうと、転用がなかなか難しくなるので、なるべく製材したそのままの姿をそのままの状態で家具化していくっていうことを試みてます。

オフィスで使われてた木材が何か10年後ぐらいに、もうちょっと慈善的な意味の家とかに造り変えられたりしたらすごく素敵だし、そういった転用の可能性っていうのを担保したいっていうのは、すごく意図してますね。

今じゃ使われてない
小径材を使ってみたい

今じゃ使われてない
小径材を使ってみたい

今、山の価値がほぼないと思われている状態の中で、より付加価値が高かったり、無駄のない木の使い方っていうのをしなきゃいけない。するべきなんですが、なかなかそこができていなかったりする。

例えば、直径12センチとかの小径材を使って木材を取ると、角が丸くなって皮のついた面が出てきちゃうんですよ。でもそういうのって現代は流通材として認められないですよね。

ちょっと前の時代は、目につかないところに小径材って使われてたりしたけど、今は規格化がされすぎてて、そういうものを流通材として受け入れ側が認めてないから、メチャクチャ余ってるんですよね。それが結局、歩留まりを悪くしていて、せっかく生産したのに商品価値のある木が限られてしまう。

そういう森林事情もあって今回、ベンチの1つを小径材で作るっていうのもやります。そうすることで、今まで価値がつかなかった小さい径の木材にも、利用価値が生まれてくるっていうことが、1つ意味があるかなと。

加工もしない塗装もしない
都市で木材を熟成させる

加工もしない塗装もしない
都市で木材を熟成させる

流通材を加工しないで使うってことは、リューザブルだってことの他に、お金をちゃんと産地に返すということにも貢献すると思うんです。加工の手間なく、プロダクトとして消費者に届けるイメージですね。そのような意味で今回、実際に設計した家具は、本当に製材所みたいに木を積んだだけのような、デザインと作り方にしてます。だから木材に対しては、塗装も基本はしていなくて無垢のままですね。

人の手が触れやすいところは、座面のクッションだとか、テーブルにもガラスを置くとかして保護するわけですけど、あとはもう基本的に、製材された木がそのまま野ざらしになっているような状態。より良い材になっていくプロセスとして乾燥が大事なんですが、都市で自然乾燥させてより良い材に熟成されていくイメージです。

消費地としての都市と、生産地としての山や製材所みたいなものが、明確に分かれずにもっとこう溶け合う状況になると、横断した繋がりが生まれるんじゃないか、っていう期待も込めてあります。

見えないCO2を見えるようにしていく

見せ方として今回考えてるのは、椅子なりカウンターなり丸ごと1個で、どのぐらいのCO2を固着してるかを顕在化させたい。表現としては、家具の一部に英語表記をステンシルで印字するわけですけども、この家具にはCO2が何キログラム固着されてるよってことが分かるようにする。

それが簡単にできるのは、家具の作り方を全部モジュール化してるから。105ミリ角の同じ木材を使ってるので、積み重ねてあっても、単純に長さを計算すれば自動的に立米数のCO2固着量が簡単に出せるようになっていると。あと、オフィス全体でどのくらいかってのも分かる。これもいずれは何かに置き換えて「ドームの体積」や「クルマの走行量」でみるとこのぐらいですという風に、ちゃんと分かるようなところまでは届けたいなと思っています。

消費者側で都市にいると
遠くを見るのが難しい

© Photography by Hajime Kato

今回、本当に色んなところを巡らせてもらって、山と林業に関わる人たちの生の声と状況を見せていただいて、そこへダイレクトに働きかけられるプロジェクトに参加してるっていうのは、自分としてはとても嬉しいんです。

なんていうんですかね、僕も普段は消費者側にいて都市で暮らしてるし、目の前のクライアントって大体どっちかっていうと消費者としての クライアントであって。建築家はその人たちのために作るってのが、まぁよくある構図なんです。

だけど今回はそうじゃなくて、すごく遠い所にいる生産者の人たちの良好な関係を作ることが目的にあるし、都市住民の生活の価値を担保しているという、なんかそのぐらいの射程で今回のプロジェクトが組み上げられそうになってるのは、僕としてはすごくやりがいがあるなと思っているわけです。

見え方が全然違うから
木材の話は面白い

見え方が全然違うから
木材の話は面白い

国産の木材って、それぞれの立場で見てる射程が違ったりするから、バラバラっていうか色んな解釈ができるなと思っていて、でもそれが、すごく面白いんですよね。答えがないからこそ、いろんな人の話を聞いてみたいなーっていう欲求が、色々見させてもらった後の、今の僕の状況としてはあってですね、何かこう非常に議論が呼び起こせそうな領域だなと。

建築で木材を議論しようと思うと、専門性が高すぎるがために、ちょっと狭い範囲での話になりがちなんですけど、木材って建築だけの問題じゃないし、まずエネルギーであるし、あと環境問題であるし、都市論でもあるし、あらゆる人に関係があって議論ができそう。人によってはエネルギーとして見るし、素材として見るし、森の中の生き物の方を見てる人もいるし、スギ花粉を見てる人もいるし、そこがなんか1つのフィールドで話ができるってすごくいいテーマだなって。

木材っていうモノは一緒なのに、見る人によって見え方が全然違う。あらゆる角度で語れるってのは、すごく面白いし、いい領域だと思いますね。