製材の現場を見れば意識が変わる
浜中材木店/製材・施工
浜中 康一さん(写真左) 浜中 英治さん(写真右)
康一 材木屋、製材所、いろいろ木を扱う業者ありますけど、木を分かって製材できるところっていうのは本当にごく限られると思います。小売店で工業製品を右から左に流すような形になると、木の良さというより物を売るだけの世界になってしまう。
この現場に来て、製材してる風景から原木がね、どう変わってくかを見てもらうってのが、まずそれだけでも意識が変わるんじゃないかなって思います。それを学ぶことで木の質から話ができますので。
英治 街のお店で見るのが木材だと思われてますけど、それがどういう風に作られるかって過程を知ってるのは、建築士さんでも少ないんですよね。そういう人たちが製材所に来て見学すると、製材する迫力に圧倒されて、木の風合いとか香りも含めてビックリするのと、どういう風に「木取られていくのか」わかる。
やっぱり自然素材ですから、バランスの問題で木が反るとか、動くとかっていう状態が実際に見えますから。それでまた木を認識していただけると思います。そうすると今度は図面を書くときに、少し木を意識した絵になっていく。若いとか年配とか関係なく、こういう現場に接点のある人とない人では認識が違うと思いますね。
自然素材の木を理解して
使ってもらえる人が育ってほしい
英治 30年前とかから比較すると、何をするにもやっぱり資格のある人が関わってくる時代ですからね。単にモノが作れる、家が建てられるって人だけでは、材料を動かすことはなかなか難しくなって、そこを建築士さんとか資格を持つ人が引っ張ってってくれるような時代。
ただ、その人たちがちゃんと木を理解してるかどうかは、また別問題になってくるんで、そこでお互い情報交換して質を高めるというか、認識をどんどん高めていく必要があるように思いますけどね。
家造りにしても、色んな条件で制限されながら最低限のコストで作るとか、あるいはデザイン優先の中で家を作るということが方向性としてあると思うんです。そうするとやっぱり、木を使う所が動いてしまっては困るような場合もある。それを解決するのに工業製品化に進んでしまうと、木の本来の良さっていうのが全て排除されちゃう。全て判で押したように規格品を作りなさいっていうと、もう育林から始まって大変なことになりますから。
木は自然素材ですから、長所もあるけれども、やっぱり欠点もある。その両方を受け入れながら使ってもらえる人たちが育って欲しいなって思いがありますよね。
木は生きている
その価値を伝えていく
康一 木は生き物なんだっていうのを認識してもらえると、設計してる段階で多分意識が違うと思うんですよね。確実にウレタン塗装でバッとやってしまえば、もう生き物でなくなっちゃうって僕なんか思ってるので。
山で生えてるものですから、木は生きてるっていう認識は、間違いなく人間は持ってるんでしょうけども、図面を書き始めたりすると、だんだんその概念が薄れていく様に感じるところもたまにあるので。こういう製材の現場に来て、そういう話をすれば、なんとなく分かってもらえる。
木の量を使うことに関しては、工業製品作って使うのも木の生きる道なので、それを全くダメとは思わないんですけど、本当の無垢のものとね、そうじゃ無いものを、どこまでどう棲み分ければいいのか。ベニヤも木だけど、1枚板でつくったテーブルも木だよっていう価値の違いっていうかね、そういうところを伝えていくのも、これから確実に必要になっていくんじゃないかと思いますけどね。
英治 色々考えてくれてる建築士さんとコミュニケーション取りながらね、私たちが情報発信して。また理解してくれると、その人たちがユーザーに対して発信してくれますから。そういう関係になってくると、だんだん木が活用される機会が増えてくと思います。
木を選んで使う楽しみを
十二分に味わってもらいたい
英治 図面の中とか計画の段階で「こういうものは使えるんですか?」とかね、質問はありますから。こちら側からは、そういうものは準備できるとか、それは無理だよとか、これくらいのものを用意しないとそりゃ持たないよとか、建築士さんとは色々話してますね。
我々にしたって、ただ言われた材を出すってのは可能だけども、それだけじゃやっぱり面白味も何もないんで。「こういうとこに使いたい」とか分かると、こっちも職人的な気持ちが動きますから。
康一 設計士さんから図面いただいたりして直接話できて、その中で使われる場所がわかってくれば、木を出す方としてもプライドがありますから。やっぱりお客さんに、少しでも笑顔になってくれるようなものが出せればいいかなーと思います。
単に仕様書だけパッと送られてきて材料出すと、どんな家になるのかも分かんないし、とりあえず言われた仕様のまま出すことしかできないので。せっかくね、木を選んで使っていただくっていうことであれば、そういった楽しみというかね、そこを十二分に味ってもらいたいなっていうのはありますからね。
英治 ユーザーにしたって「あの時こうした」とかね、「あそこにあった木がここにある」とかね、そういう過程の中で建つと思い入れが違うので、そういうは非常にいいなと思います。
木のある空間で育った人ほど
木を大事に使ってくれる
康一 やっぱり空気感とか体に感じるものってのは、絶対に素直に分かると思うので、都市の中で木を使った空間を体験できるところが増えるだけでも、また違うと思いますし、木質化というか木の生きる道が増えれば嬉しいですね。
自分なんかは木のあるところで育って、木でできた空間を知ってるんで、そういうの良いなって思う気持ちがありますけど、最初からビニールクロスの家に入ってしまえば、それが当たり前になってしまうので、何も違和感を感じないっていうのはあると思います。スタートがどこにあるかでやっぱり違うのかな。
英治 基本的に関心があるかないかで分かれちゃうんですけど、取っ掛かりで自然素材、木というものに触れたいとか、お爺ちゃんお婆ちゃんの家がすごい居心地が良かったから、それを目指してまたおウチを作りたいって人は、木の佇まいの家でずっと継続しているような気はしますけどね。知れば知るほど木を大事に使ってくれるっていうのかな。それだけ思いってのは、やっぱり大切なのかなと。
そう思ってもらえるように我々は仕事の中でね、木の良さも合わせて伝えるって言うことが必要なんだなと思います。おそらく黙ってたら、何も伝わらないし、分からない。