地域材をつかったマンションの顔づくり | 国産木材を活かす繋げる|MOCTION(モクション)

地域材をつかったマンションの顔づくり

MOCTIONマッチング事例
ジオ白壁 完成予想CGパース ©阪急阪神不動産株式会社

阪急阪神不動産株式会社(以下、阪急阪神不動産)は分譲マンション「ジオ」シリーズのすべての共用部に国産木材を活用して木質化を推進しています。原則として、地産地消の地域材を用いることで、地域の森林環境保全に取り組まれています。マンションにとってエントランスやホールなどの共用部はまさに「マンションの顔」となる重要な空間です。そこで国産木材、しかも原則として地域材を使うというのは、国産木材活用の象徴的な取り組みと言えるでしょう。

MOCTIONには阪急阪神不動産の多くのご担当者が見学にご来館されています。

岡田美都 氏〈阪急阪神不動産〉
磯野孝行 氏〈阪急阪神不動産〉
樋口真明 氏〈ウッディーラー〉
濵田道昭〈MOCTION〉

技術力と対応力を見越したマッチング

木と人を探し求める人々をつなぐ

MOCTION展示「太い木でつくるよ 森の循環を促すマテリアル展」(2024年9月)
MOCTION展示「ものづくりと森づくりのまち豊田から」(2022年7月)

濵田道昭〈MOCTION〉(以下、濵田)ウッディーラーさんと知り合ったのはMOCTIONショールームで催された豊田市の木材展示でした。豊田といえば「TOYOTA」。自動車のイメージが強いのですが、じつは市の面積の7割が森林という林産地でもあるんですよね。展示を拝見して豊田市のイメージが変わったのを覚えています。木材産出ならお隣りの岐阜県が盛んで、木材の種類も豊富です。しかし阪急阪神不動産さんから地産地消をやりたいという強いご要望があったこと、何より豊田市の林業・木材生産を大手デベロッパーに広めることは意義があると思ったんです。ウッディーラーさんならジオブランドの洗練されたデザインにも応えられるセンスがあり、幅広くコーディネートできる。通常の製材所や単一加工の木材会社よりも柔軟性があります。分譲マンションの共用部はマンションの顔です。大量生産の建築材ではなく、1棟ごとに1点もののクオリティが求められます。そうした要件もウッディーラーさん向きだなと思ったんですよ。

想いを共有して始めた小さなスタート

磯野孝行 氏〈阪急阪神不動産〉(以下、磯野)ウッディーラーさんとの初めてのお取引きはジオ覚王山(23年竣工)とジオ八事春山(23年竣工)の木製館内版です。これらの物件は当社初の東海圏での事業でした。当時は会社として国産木材を使っていく体制ができていなかったのでスモールスタートになってしまいました。肩透かしを感じさせてしまったかもしれません。しかしマンション開発は最初が肝心です。東海圏の開発1棟目から地域材利用をやっていこうと、木製館内版の製作をウッディーラーさんにお願いしました。

樋口真明 氏〈ウッディーラー〉(以下、樋口)「SDGsやらなきゃ」や「木が好き」と、「地域の木を使う」はちょっと重みが違う。ご依頼は単なる「木製の掲示板」を求められているわけではありません。木材利用だけなら「ホームセンターで木のコルクボードを買えばいい」に留まってしまう。だから僕らは阪急阪神不動産さんの「想い」をヒアリングしました。するとストーリーが見えて、地域材を使うことでどのような価値を提供できるのか共有できたんです。結果的に木製館内版は愛知県内の端材や間伐材を使用して製作し、納品いたしました。

磯野 この2物件の小さなスタートに真摯にご対応を頂いたことで信頼関係が築けました。そして満を持して、今回ご紹介する東海圏3棟目のジオ白壁で、共用部の木材化粧パネルをご依頼することになったんです。

ジオ覚王山の木製館内版
ジオ八事春山の木製館内版

マンションの象徴となる木組みの装飾

白壁の街並み ©阪急阪神不動産株式会社
ジオ白壁 現地(2025年2月)

屋敷街の品格を感じる仕掛け

磯野 現在建造中の3棟目となるジオ白壁は、ウッディーラーさんと私どもが共有した「想い」をよく反映できていると思います。ジオ白壁は計画段階から物件のコンセプトを樋口さんに伝えられました。アドレスとなる名古屋市東区白壁は江戸時代から続く屋敷街です。立地は名古屋市が制定する「白壁・主税・橦木都市景観形成地区」に隣接しています。今でも羽目板や立派な庭木の町並みが残っていて、市民に愛される御神木のクスノキやオオカンザクラの並木道など、木のエッセンスを取り込むにはふさわしい物件でした。

一方、本物件は出来町通という交通量の多い幹線道路にも面しています。ご帰宅されたお客様が白壁アドレスの閑静なイメージにマインドチェンジできる仕掛けがエントランス共用部に必要でした。今回製作して頂くエントランスホール内の木材化粧パネルは、お客様が帰宅された際にホッとするような雰囲気がつくれると期待しています。

濵田 竣工(2026年3月下旬予定)はまだ先なので実制作はこれからなのでしょう。ウッディーラーさんからどのようなプレゼンがあったんですか。

1/1モックアップ

磯野 1/1スケールのモックアップを製作してご提案いただきました。現場事務所に飾ってあるので訪れた際は必ず撫でています(笑)。

樋口 イメージの解像度を上げるためには1/1のモックアップが必要だと判断して製作しました。とくに分譲マンションのような竣工前から販売開始される案件は、WEBサイトやパンフレット等を通して住まわれるお客様とイメージを共有する必要があります。また現場においても取付施工する前に実物の一部を見て触ってもらうのは重要なことです。そこら辺は僕が建築出身だったこともあり、敏感になれました。

濵田 どんなご提案をされたのですか?

樋口 はじめにイメージパースを3案ご提案して物件のイメージとすり合わせました。採用されたのは縦ラインをイメージした木組みのデザインです。派手すぎないけど見飽きないを心がけました。

木材化粧パネルのモックアップ ©阪急阪神不動産株式会社
ジオ白壁 完成予想CGパース ©阪急阪神不動産株式会社

濵田 どんな木材を使われたのですか?

樋口 材料に使用したのは愛知県産のスギ材です。90×45の二次部材でよく出回るものですが、白壁の街やジオブランドの高級感を意識して無節材を選びました。着色塗装も行って木材の質感に高級感をプラスしています。木材利用といっても何でもかんでも白木や節材で使って木を主張するものではありません。木組みの立体感や素材の美しさをサイド光が演出してくれるはずです。

磯野 本物件は14階建て。エントランスホールの吹き抜けも高さ5m弱あって縦ラインが強調されています。お住まいなるお客様にとって木組みのパネルは本物件のシンボル的な存在になるでしょう。

森と木のファンづくり

社内の感動をお客様の共感へ

岡田 入居後のアンケートでは83%のお客様にご満足頂いています。また、社員を完成物件へ連れて行くと反応が違いますね。木の香りに驚いたり、使い方に驚いたり。社員同士のよい刺激になっているようです。この気持ちの高揚を最終的にお客様へつなげて共感をつくっていきたいです。

ジオ阿倍野松崎町グランフィール エントランスホール ©阪急阪神不動産株式会社
豊田市足助町地内の人工林の森
ウッディーラー外観

まず森と木を好きになってもらう

樋口 地域材利用のためにふだんから意識しているのは、まず森とか木を好きになってもらうことです。いろんな立場の人が、地域の森を気にする、意識する。そういう社会の雰囲気をつくりたい。僕らはある意味で森の伝道者。森の福音を届けたい。方法としてよくやっているのは一緒に山を歩いてもらう活動です。山を歩くことで生物としてのセンサーが敏感になります。一緒に山を歩いて心拍数を上げて、森の空気を深く吸って脳を活性化させていく。たとえばマンションを購入されたお客様と森林ワークショップやワーケーションを開くとか。引き渡しして終わりじゃない。地域の森の記憶を頭の片隅に置いてもらうことが大切だと思います。

岡田 樋口さんの仰るとおりですね。2025年度はお客様を招待して森林ボランティアをやりたいです。豊田市の森へぜひ行ってみたい。

濵田 私も行きたいです(笑)。日本は依然として圧倒的に外国産材が多いです。社会の認識はまだ「日本の木って本当に使えるのだろうか?」なんです。MOCTIONへお越しいただき、実際に各地域の木に触れて、素晴らしい木の商品と出会って、日本の木のファンになってほしいです。伝えるのは木だけじゃなく「人」についても。まずは今日お聞きした阪急阪神不動産さんとウッディーラーさんの情熱を語っていきたいです。

MOCTION 濵田による木材紹介